信長の忍び外伝 尾張統一記

若き信長の大活躍


 
作者   重野なおき
巻数   3巻
あらすじ まだ尾張の一武将の息子、「うつけ」な信長。彼が尾張を統一するまでを描く、『信長の忍び』の前日譚。

 

重野漫画の歴史4コマは史実エピソードもてんこ盛り。
戦国時代に興味を持ち始めた子どもあたりに渡したい。面白く分かりやすく描かれています。
代表作は『信長の忍び』。ここで描かれたキャラを使い、伊達政宗や明智光秀、黒田官兵衛や真田家を主役にした作品も出ていて、どれも楽しく読めます。
麻雀分かる方なら、武将が打つギャグ麻雀物も一冊あるのでそちらもどうぞ。

信長はここで言うまでもなく有名度は最高の武将。
それだけに真実かどうかはともかく、史実として残された話は沢山残っています。それを一つずつ拾っていくのがまた楽しい。誰もが知っているような話はもちろん、それなりの資料に当たらないと出てこないものも載っています。
もちろん武将マニアや歴史好きなら当然知っているのでしょうが、テキトーになんとなく知っている程度の人から見れば、こんなん知らんわエピソードってけっこうあるもんで。そんな話が丁寧に拾われています。
本作は、信長出生時の1534年から始まって、1559年に将軍足利義輝に謁見し尾張を統一するところまで。
吉法師と呼ばれて暴れまわっていたとされる頃や、父亡き後の若き当主時代ですね。

引用「信長の忍び外伝 尾張統一記」
1巻(重野なおき)より
産まれてすぐに狂暴

破天荒な振る舞いでうつけと呼ばれている信長。
それは仮の姿で実は思慮深く、当主になったのちは尾張制覇を考えている。
形ばかりの初陣での出来事を機に、兵の招集ではなく兵の常駐となる『馬廻り』となるメンバーを集めるというように、目標に向かって一歩ずつ動いていきます。
袴すら履かずに木登りしていて馬で走り回るような、若き信長の奔放さと同時に、沢彦和尚に師事し学習している描写も多めに取られていて、下地をしっかり作っているという描写。
父の位牌に抹香を投げつけた逸話はあまりにも有名ですが、本作では悲しみと憤りの行き先として表現されています。

改めて信長の元服からスタート。
このあたりの尾張の背景は、信長の父・信秀を家長とする織田家の上に、別の織田家と、斯波さんという上司が居て、尾張統一以前にこいつらをどうにかしないといけない。でも竹千代(のちの家康)がこの時点で織田家に居て、今川ともなんだかんだやってる。
つまり信長パパは、上司に突っつかれながらお隣のライバル今川の攻めを撃退しなければならない状態。オメーが今川をどうにかすんだよ信秀ぇ、なんて言われて頑張るけど武力が足りない信秀くんは大変。この時代の上司とライバルだからね、いきなり殺害とかあるし。
後ろ盾のために、ここで斎藤道三の娘の輿入れです。信長に負けないというか、輪をかけた奔放さで描かれる帰蝶。資料が無いのを逆手に取ったキャラ付け。
このあたりで森可成が配下に付きますね。本作ではあまり大きく取り上げられないので、彼の活躍も帰蝶の奔放を通り越した爆裂さも、ぜひ『信長の忍び』を読んでください。

引用「信長の忍び外伝 尾張統一記」
1巻(重野なおき)より
可愛い帰蝶

1巻は父信秀が亡くなるまで。2巻からは家督を継いだ信長の活躍が始まります。
この織田家内乱は、信長を主役とした作品ではあっさりと終わらせがちな部分。そりゃそうだ、その後のほうが長いし盛り上がるもの。でも本作は、その盛り上がり部分は別作品でやっている。なので3巻みっちりと描かれます。
この内乱のところのみを主題にした漫画作品は他に無いんじゃないかな。

甲相駿三国同盟が進んでいる描写があるころ、信長の元には後に名を馳せる面々が集まってくる時期。
前田は既に馬廻り衆だし、丹羽・佐久間も改めて忠誠を誓うシーンがわざわざ取られています。秀吉もこのころに小物として出てきて、続々と味方が増えるのが2巻。柴田は織田家内に居るけれど、もうちょっと後になりますね。

引用「信長の忍び外伝 尾張統一記」
2巻(重野なおき)より
有名な草履暖め逸話

3巻ではマムシの道三が討死するところから始まり。
後ろ盾が無くなったと思われた信長。ここで兄弟の謀反とか、もう当時の権力争いってすごいな。弟の信行を滅ぼし異母兄の信広を諫め、これで後顧の憂い無く前に進める信長。
彼の大躍進が始まります、というところで本作は終了。『忍び』に続く形で締め。

武将のエピソードというものは、残された文だってどこまで正確かはわからない。
虚実織り交ぜて書かれているのであろうと思われているし、現代の解釈とは全く違う可能性もある。
だからこそフィクションに落とし込む隙ができるし、この隙をどう料理するかが作家の腕にかかっている。

いろいろな、戦国武将が出てくる漫画を読んだけれど、もう武将物4コマは重野なおきが居ればいい。
4コマに限定せずともいいんだけれど、ストーリー物は壮大なものが多すぎてギャグ入り作品と比較できないので。
残された史実を決して曲げることなく器用に使い、所説あるものについてはストーリーに一番沿うものを利用する。ポップで可愛らしく個性豊かなキャラは、きちんと区別ができて読みやすい。
主役を変えても、どうしても同時代を描くことが多くなるんだけれど、他作品との矛盾が出ないように目線を変えて描いているのが、並行して読むのとまた楽しい。

フランス革命は『ベルばら』を、古典文学は『あさきゆめみし』を読むのはマンガ読みなら当たり前。
そして戦国武将を知るなら重野4コマを。となってほしい。