沈夫人の料理人

言葉責め中華料理漫画


作者   深巳琳子
巻数   4巻(+パラレル物2巻)
あらすじ 食べることがなによりお好きな沈夫人は、雇い人の李三が作る料理が殊の外お気に入り。
夫人のワガママに翻弄され、困り果てながら出来上がる李三の料理は絶品で、かくして沈夫人は今日も李三に声をかけるのです。

 

美しくお優しい奥様にメロメロの李三と、使用人が自分の指示に従うのは当然、という位置にいる沈夫人。このすれ違いがたまらない。
李三の情けなさを大きく包み込む奥様、であればステキな話ですが、この作品はそうではありません。
李三のヘタレっぷりと、高慢なのに可愛いじゃん奥様、ってのを楽しむ作品です。

お金で買われてきた李三は愚直な料理人。料理で喜んでいただくために、一途に地道に厨房に立ち続けます。
李三がヘマをし奥様が叱咤することで、悩んで悩んで困り果てて出来上がった料理であるほど傑作なため、奥様の無理難題がエスカレート。しかもどれだけ無茶を言われても、李三は「奥様のお優しさゆえ」と受け止めてしまうので、結果として言葉責めが満載に。
精神的なSMモノと言ってよいでしょう。

金持ちのワガママに使用人が応える、という図式ですが、これが嫌味にならずギャグに昇華されています。
季節外れの椰子の実を手に入れるために李三が取った行動とか、その後のエピソードとか、ほんとダメ、愚図、最低。
奥様は、さすが人を使う側にいるわーと思える行動、でもかわいい。

奥様の思い付き、これは全てご自身の退屈を吹き飛ばし愉快になりたいため。好奇心旺盛で何でもやりたがって飽きっぽい。欲しいもののためなら使えるものは使う。でも目上の方には頭が上がらない。
使用人に対しては横暴というほどでもないし、良い奥方なのでしょう。
旦那様のことはきちんと立てているし、仲睦まじいご様子。奥様は心で舌を出してるときもあるようですが。

舞台は王朝がある頃の中国で、本格的な中華料理も出てきます。
レシピは分量まで詳しく載っているのですが、簡単に入手できない材料も多くて、そのあたりは再現が難しい。
1巻だけでも豚頭、ウサギ、カエル、熊の掌などなど。気になるのはイカの卵、魚屋で手に入るのかしら?
筍焼きや胡瓜の即席漬け、白菜のカニ餡かけといった難易度の低そうなレシピもあるので、再現するならそのあたりかな?
4巻に「カスタードクリームの揚げ物」があって、材料も常にあるものがメインだし、作ってみようかな。

絵柄は劇画寄りだけどそこまでは濃くなくて読みやすいです。
情けない男を描くのが上手い。見てるだけでイライラするような男、李三。李三をいじめたくなる奥様の気持ちわかるもん。
李三の兄、李大というのがまたダメ男。こちらは李三とはまた種類の違うダメっぷりで、大酒飲みで博打打ち。そのダメさを余すところなく発揮しています。
そうかダメな男を描くのが上手いのか!

奥様が李三の料理を食べるシーンがとにかく嬉しそうで可愛らしくて、本当に美味しいんだろうなーと思わせます。
それと比例して李三を怒るときの奥様のお顔ったら、怖~い、でもお美しい。

引用:美しい沈夫人
引用「沈夫人の料理人」
2巻(深巳琳子)より
李三を責めている真っ最中の夫人、
でもお美しい…

同じキャラのパラレルで「沈夫人の料理店(全2巻)」があります。
こちらは歴史が進んで夫人も洋装。西洋人との交易もあります。
夫人がパトロンとなって李三が店を構えるという話ですが、二人の精神的な関係性は全く変わらないので、できればこちらもご一緒に。