彼方のアストラ

小学校の図書室に置いていい

 
作者   篠原健太
巻数   5巻(合本版あり)
あらすじ 宇宙に進出している世界。ケアード高校の惑星キャンプ実習が始まった。メンバーは実習用惑星に到着したが、謎の球体によって不明の場所に放り出されてしまう。宇宙で遭難・漂流するメンバー達。そしてここは何処なのか・・・

 

70年代の作品って、有名長編でも巻数は少なくて、密度が濃くてまとめ方がお見事。そういった、いい意味で70年代の漫画を読んだような読後感でした。
完璧なSFジュブナイル、小学校の図書室に置いていい。とにかく素晴らしい。

スタート時点がとても少年向けSFですごい。
まず「宇宙で遭難」するという部分。宇宙船の故障や謎の攻撃ではなく、本作はキャンプ惑星にはちゃんと到着しています。その後いきなり訪れる生命の危機、それを回避する状況。早いテンポが読みやすく、グイグイ引き込まれる。

漂流モノは最初から全員が出るのが普通で、本作でもキャラクターが一気に紹介されます。
把握しづらいキャラだと途中で「こいつ誰だっけ」とページを戻ることがありますが、本作はギリギリ一気に把握できる人数にうるさくない程度の個性とビジュアル。序盤から把握しやすい性格付けで、キャラの混乱が一切ありません。

キャンプメンバー
引用「彼方のアストラ」1巻(篠原健太)より
キャンプのメンバー

ただの学生集団(+α)かと思いきや、全員が何かしらの得意・特異を持っています。
ひとりひとりがけっこう重たいエピソード、しかしそれをネガティブな話で終わらせず、力と知恵で困難を乗り越えていく。
そして男子チームのアホっぷりと女子チームの可愛らしさ。重い話の中で、とてもいい息抜きになっています。

宇宙空間や星々の描写もとても魅力的。
どんな漂流でも大切なものは食料で、本作でもやはり食料確保は必須です。そのため新たな星の探索をする際には
その星の生物植物も描かれますが、これがまた個性豊か。読んでいてとても楽しい。グルッピーかわいい。

宇宙風景
引用「彼方のアストラ」2巻(篠原健太)より
美しい風景

話の核に迫っていてもギリギリまで謎を引っ張ってきた構成力。
うっすらと気付くひともいるとは思うけれど、漫画というスイスイ読める媒体だけに、気付かずに読み進めて行った上で大きく驚いてほしい。
初見の方はどうかネタバレに引っかからないで。再読時には隅々までチェックを。
宇宙船や服装のデザイン、小さな発言も全てよく練られていて、遊びはあっても無駄はありません。
洗練された綺麗な画風に新規の方も入りやすい巻数。宇宙モノが苦手な方でも本作なら大丈夫。
電書なら合本一冊版もあるので、こちらのほうが一気読みしやすいかも。

ホーガンの「星を継ぐもの」、
これを引き合いに出していた感想をどこかで見ましたが、確かにあれを初めて読んだときの衝撃に近い。
あの気持ちを思い出させてくれたこの作品に拍手を送ります。

 

「星を~」は紙で持っているので、再読しようかなーと本棚に目をやって、
うっかり銀河ヒッチハイク・ガイドを見つけてしまった。これは再読したくないな・・・