からくりサーカス

名場面が多すぎる


作者   藤田和日郎
巻数   43巻(完全版26巻)
あらすじ 親を亡くした小学生の勝、奇病持ちの拳法家鳴海、そしてサーカスから来た謎の美女しろがね。
理由もわからずからくり仕掛けの大きな人形に襲われ攫われた勝を助けるために二人は動く。
奇妙な、でも美しいしろがねに惹かれる鳴海。鳴海から人として扱われることで感情を取り戻すしろがね。そして二人を慕う勝。遠い遠い昔からの因縁、そして輪廻が幕を開ける。

 

大長編、しかも藤田作品ですから手出しに躊躇する方もいらっしゃるかなと思いますが、何としても読んでいただきたい。個人的にはうしとらよりもからくり派。
ぐいぐい引き込まれるこの作品、43巻をインターバル無しに読むのは大変だけど、一度読み始めたら止まらない。

まず導入が3巻まで。この導入部で本作の基礎というか、謎は多いままですが勝の背景が分かります。
電書でよく3巻無料キャンペーンってやってるけど、本作は3巻で終わらせてはいけない。4巻から展開が変わって話が違う方向に動き出し、40冊かけて謎と秘密が明らかになっていきます。

4巻以降、まずは「からくり編」「サーカス編」に分かれ、からくり編で鳴海メイン、サーカス編で勝メインとなってそれぞれの話を追っていく形。
鳴海がしろがね達の謎を、勝が自分は何者なのかを解いていきます。

鳴海の苦悩と悲哀、指で描いたと言われる迫力の場面は
ダークヒーロー
という言葉では表現し尽せない怒りと悲しみが画面から溢れています。
ギイとルシールが頼もしくて強く、そして彼らの幕引きは滂沱させられる。
その後の鳴海も読んでいてただ辛く悲しい。大量の辛い荷物を背負い続けた、鳴海をどうか楽にしてほしい。

鳴海としろがね
引用「からくりサーカス」42巻
(藤田和日郎)より
しろがねを突き放す鳴海、辛い

勝の秘密と痛々しさ。
自分が何者なのかを知ったときの辛さ、強くなろうと成長する姿は、ここまでの荷物を負わせるのかと、読者が心を痛めることすらあります。
サーカスメンバーが見せる家族愛が暖かく、しろがねへの淡い思慕が可愛らしい。
個人的に好きなシルベストリ戦。そこで見せた強さは、サーカスと村の「家族」が、勝の成長に必要だったと分かります。

シルベストリと勝
引用「からくりサーカス」34巻
(藤田和日郎)より
シルベストリ戦での勝

敵側はほんとに憎らしい。あんなに勝や鳴海を傷つけた奴らだもの。
だけど最期は愛おしく、それまでの悪事を許したくなるほどに切なくなる。
長編ゆえに敵も大人数なのでひとりだけピックアップするとしたらこれはもうメリーゴーラウンド・オルセンで。頭部がメリーゴーラウンドになっている人形、その奇妙さは、オマケでのコミカルさも含め人気あるはず。

書評や感想まとめでよく見られるように、サハラ編の完成度の高さ、そして黒賀村のべろべろばあに繋がる一連の流れは素晴らしいとしか言いようがなく、実際にとても好きな章です。
本作は、とにかく名シーンと呼べるものが多すぎる。なので強烈な場面として、フェイスレスのドリカムを。
それまでの流れからこの場面に繋がったときのぶわっと鳥肌が立つようなあの感覚ときたら。本作を超えるドリカムは今後も絶対に無いでしょう。
胸を打たれるシーンでひとつ挙げるなら、最終巻にある最古の四人の2人、最終登場のくだり。安堵と寂しさが混在する、静かに感情を揺らされる場面です。

フェイスレスのドリカム
引用「からくりサーカス」28巻
(藤田和日郎)より コマ抜粋
この世で一番酷いドリカム

清々しいラストが、最後のカーテンコールをより一層引き立たせます。
続きが読みたい、ではなく、気持ちよく終わったと思わせる。これ以上付け足すことも引くこともなく、綺麗に幕を引いた作品です。

アニメから入った方はぜひ原作を読んでほしい。
そして島本作品読者は、本作を読む前の「吼えろペン」8巻以降の再読禁止。
ペンシリーズの未読者は、からくり→ペン→からくり再読、の順で。
藤鷹ジュビロもからぶりサービスも大好きです。