七つの大罪

綺麗に着地した最終回

 
作者   鈴木央
巻数   41巻(スピンオフ多数あり)
あらすじ ブリタニアにあるリオネス王国の王女エリザベスは、国の危機を回避するため王国最強最悪と呼ばれた騎士団「七つの大罪」を探す旅に出ていた。
疲れて迷い込んだ酒場“豚の帽子亭”店主はなんと、探していた七つの大罪の団長、ドラゴン・シンのメリオダスだった。

     
40巻超の長編、バトルファンタジーの王道要素と少年漫画の基本を押さえています。アニメ化もしてスピンオフも続編もあって大人気。

強敵を倒すと更に因縁の強敵、倒すとまた過去の因縁といった具合で進むバトル形式ですが、味方のパワーアップにきちんと理由付けをしてあるので、インフレの印象は少なく感じます。
元々が人外の者だったり特殊能力を持つ者ばかり。取り上げていた力を戻したとか、忘れていたことを思い出したとかなので、急に強力になっても話の流れとしては納得できる。
序盤でわかりやすいのはディアンヌが神器を取り戻した、とかですね。神器そのものが強大な力で持ち主と相性が良い=パワーアップ、となります。
読者の知らないところで修行していた、みたいなのは無い。

1巻のメリオダスは表情も少年っぽい描写で、後半で見せるシリアスさはカケラもありません。
しかし最初っから当然に強い。何故こんなに強いのかはこの時点では明かされず、折々に過去の情報が挟まり、これでも力を押さえていたことが分かってきます。
エリザベスも最初は少女っぽいビジュアル。エリザベスが言う「名前も知らないあなた」と、それを聞いて笑うメリオダス。再読するともうここでグッとくるので、読み終わっている方はもういちど読んで!
そして1話っからセクハラしまくりでした。少年誌だね。

引用「七つの大罪」1巻(鈴木央)より
メリオダスを見つけたエリザベス

長編なのでいくつかのパート分けができます。端折りまくってむりやり3つにしてみた。

<リオネスを元に戻せ!七つの大罪集合>
眼前の敵は王国聖騎士団、メンバーは7人中6人まで集結。聖騎士団の中に魔神に操られた者がいて、十戒を復活さるべく暗躍するよ。
<十戒復活 ブリタニア蹂躙>
復活してしまった十戒がブリタニア全土を襲う。メンバーは全員集まったから十戒と戦うぜ!いろいろ話が動くんだぜ!
<魔神王阻止と呪いの解放>
リオネスに再集結した大罪メンバーはキャメロットの奪還に動くが、エリザベスは全てを思い出し呪いが発動。どうすんだよこれ。女神族強っ。

大罪メンバーは徐々に集結。
僕っ子巨人族のディアンヌ、不死身のバン、妖精王キングの三人は早め、4巻までに集まります。ゴウセルは8巻。マーリンは11巻で顔見せだけ。エスカノールはもう少し先、バイゼルの喧嘩祭り(2回目)まで待つことに。

この喧嘩祭りは、主催地のバイゼル主催と十戒主催の二度あり、両方とも息抜きかつ重要なパート。
5巻から始まるバイゼル主催のほうはディアンヌの神器を取り戻すのが参加目的。お祭りに浮かれるモブが楽し気です。
メリオダスとバンの異常な強さと、対比するようなキングの弱弱しさの落差がひどい。祭り終了後にエリザベスが自国のリオネスに戻されてしまい、彼女を取り戻すために大罪メンバーが動きます。
この8巻後半から始まるエリザベス奪還戦が、本作の中でも完成度が高くてお勧め。
ディアンヌの遠投によるリオネス突入といった開始場面から、各々の参戦度合いや脇道の逸れ方までもとてもいい流れ。
バトル物はどうしてもパワー勝負になりがちですが、序盤だからこそ、まだパワー以外の出来事が印象に残ります。
女神族の謎やキャメロット王アーサーの登場もあり、伏線もばっちりで次のエピソードへの繋げ方もポイント高い。

引用「七つの大罪」8巻(鈴木央)より
ディアンヌの遠投でリオネスに突入するシーン
彼女の右手にはメリオダス・バン・ゴウセル

20巻から始まる十戒主催の喧嘩祭りは、散らばった大罪メンバーが集結するイベントにもなっています。
会場に行くには巨大迷路を通り抜ける必要があり、この迷路シーンがまた楽しいし、更に脇役の顔見せも兼ねている。
祭りは二人一組のタッグマッチ戦、エリザベスとエレインの可愛い二人がタッグを組んだバトルが素敵。二人とも強いんだけど、力のみで勝つのではない、ということがよく分かります。
メリオダスとバンのタッグバトルはサイテー、このサイテーな会話に飄々とした二人のコミカルさがよく出ています。

十戒は強い、とにかく強い。魔神族の中でも特別な者たち。人の魂を喰らい、全てを破壊する。
でも、そんな十戒にも心があります。
巨人と妖精王の二人が後進のために犠牲になる姿や、フラウドリンに芽生えた父性、デリエリとモンスピートのエピソードは皆胸を打たれるはず。心があるからこそ、ゼルドリスとエスタロッサもああなってしまうんだし。
魔神族イコール悪、ではない。他種族から見れば魔神族が悪だが、逆の立場で見たらどうなる?こういったことを、後半のエリザベス、過去のエリザベスは問いかけています。
メラスキュラみたいなダメっ子も必要なのでそれはそれでヨシ!

大罪の7人にエリザベスとホークを足して8人+1匹。
メインキャラはこれだけなんだけど、パートごとのサブキャラが多すぎてとにかく話がすごく動く。
まず種族が5つ(人間、巨人、妖精、魔神、女神)に人形と生き物と亡くなった者がいて、種族ごと・場所ごとのポイントとなるサブキャラがいて、折々に挟まれる外伝も大事な話ばかり。
だけど話があちこちに行っても、繋ぎが巧みで混乱しない構成はさすが。

引用「七つの大罪」39巻(鈴木央)より
七つの大罪 全員集合

長編物のお約束で過去シーンがありますが、無駄に長引かせず現代に戻るので飽きることもありません。特に本作では絶対に必要な情報。
不幸な過去を読ませて登場人物の心情を読者に補完し伝える、というよりも、起承転結の「起」を担う場面。過去シーン無くては現在の状況が意味不明になってしまう。バンの不老不死とエレインの関係とか、過去の描写が無いと何にもわかんないもの。

終盤近くになると女神族と魔神族の戦いになっていき、それに妖精と巨人のエピソードが挟まります。
人間はこれらに比べればとても弱い種族ですが、心まで弱いわけではありません。リオネスで市井の人々を守る聖騎士団は、皆強い心を持っています。

前半でのベストバウトが集団のエリザベス奪還戦なら、後半はエスカノールVSエスタロッサの個人戦で。こちらは前半と違いパワー勝負の最たるもの。
エスカノール戦はVS最古の魔神もあるのですが、エスタロッサ相手のほうが、彼の強さが際立っているし傲慢っぷりも恰好いい。

引用「七つの大罪」23巻(鈴木央)より
エスタロッサVSエスカノール

過去の息抜きエピソードで、七つの大罪として案件を処理する話が読んでいて楽しいです。
バンが長髪、ゴウセルは鎧を脱がないままのビジュアルで、依頼を受けて皆で海や山やドルイドの里に行き案件を処理するという軽いお話し。何事もなければずっとこうだったんだろうなというIFを思わせます。

どんどん壮大になっていく話、わくわくしながらもどこまで膨れ上がるのかと心配でしたが、とても綺麗に着地した最終回です。お約束的な部分もありますが、続編があることを考えるとこうなって当然。

スピンオフは学園物や漫画家、芸能界という場面設定。なかなかの無茶っぷりで、疲れず読める楽しい作品ばかり。
お気に入りキャラがいるならこちらもぜひ読んでみて。