バイトのコーメイくん

先見の明が光る

 
作者   カレー沢薫
巻数   3巻
あらすじ 時は今、コンビニは三強がしのぎを削る中、三顧の礼でバイトに迎え入れられたコーメイくん。覇権を握ることはできるのか、常連客の月英さんに抱く恋心は成就できるのか。

 

作者の先見の明が光る、時代を先取りしたカレー沢作品。
雑誌掲載時にはまだリアルコンビニは三強ではなかったのだけれど、合併吸収統合で正に三強になってしまった。サークルKの天使のデザートシリーズにもう一度会いたい。

読み返すと疲れるのがわかっているのに定期的に再読している本作。三国志の知識は無くても読めるけど、あればより楽しめる、いちいち出てくる小ネタ。
三国志は遠い昔に読んだきりでしたが、本作を読んだために三国志を電書で読み返す、という原点回帰をさせてくれた作品。
カレー沢作品はトレンドアイテムやワードがよく使用されるけれど、三国志という元ネタがベースにあるので他作品よりは少なく、時代遅れ感は極小で済んでいます。

主人公のコーメイくん。
モデルは当然に諸葛亮孔明。しかし軍師の片鱗は見えずに使えない策ばかりを練り、コミュ障ヒョロガリでコンビニバイトに明け暮れる。俺が居ないとこの店回らないっしょ!やべぇ。

そのコーメイくんが働くコンビニは『SHOCK(蜀)』、店長は牛に見えないけど牛という設定の劉備。
ライバル店その1、『GIGIGI(魏)』の店長は黒ヒョウの曹操、従業員は曹操様を一途に愛する司馬懿くん。
ライバル店その2、『GOGO(呉)』は虎の孫権さんが店長、未亡人の大喬さんやJK周瑜ちゃんで家族経営。
この3点が隣接していてコンビニ三国志となるわけ。

恋愛要素もちゃんと(?)あるよ!
まずは主人公のコーメイくん。毎日ホットスナックのチキンを買いに来るOLの月英さんにストーカーレベルでご執心。
三国志では諸葛亮孔明の妻である黄月英。本作中でも紹介される「孔明の嫁取り」の逸話があるように、不器量だが聡明な女性とされています。
本作での月英さんは女性ながらイケメン扱い。チキンのためストイックであろうとするその姿勢、カッコいい。コミュ障ストーカーとチキンにしか興味がないOL、果たして良い関係が築けるのか?

引用「バイトのコーメイくん」2巻(カレー沢薫)より
コーメイくん(中央)の視線を全て回避する月英さん

恋愛要素はまだあって、美女の代名詞でもある貂蝉・貂蝉を囲うパパの董卓・董卓のボディガード呂布の三角関係。
本家の三国志でも三角関係みたいなもんだからそれはいいんだけど、本作での貂蝉さんのビジュアルが、コーメイくんが付けた渾名『太陽のようなブス』そのまんま。コーメイくん渾名センスあるな。そして貂蝉さんがモテるのも、読んでるとなんとなくわかる。

引用「バイトのコーメイくん」1巻(カレー沢薫)より
手前から董卓・貂蝉・呂布

ほのぼの恋愛はSHOCK店長の劉備(牛)と、GOGO店長孫権の妹であるJCの孫尚香ちゃん(ドラゴン)。種族と体高差を超越した、作中一可愛らしいカップル。お幸せに!

引用「バイトのコーメイくん」2巻(カレー沢薫)より
JCの孫尚香ちゃんと劉備
ほのぼのカップル

槍を買うために働く趙雲くん(元ネタで凄い槍を持っていたとされる)、動けるデブの許褚(体格の良い猛将)といったバイト仲間も増えて、出てくる脇役は無機物のモップまでもが三国志ネームだしメガネ戦争は勃発するし殺し屋がマカロン作るし、コンビニを舞台としているわりには結構動く。
三巻完結なのでドタバタしているうちに終わっちゃう。このドタバタを上手に締めたもんだ。
コンビニ漫画によくあるバイトの日常や日々を追うものとは全く違うので、ほのぼの4コマ系やニー〇ェ先生みたいなのを想像してはいけない。

作者はコラムニストとしても名が知られ、メッセージ性のある作品も増えてきた。カレー沢第二期とでもいうべきか。ならば本作は、クレムリンからの不条理ギャグの流れから来る第一期と、その二期との過渡期に当たるだろう。
他作に比べて毒が薄く攻撃性も低くエロも無く、画風は洗練されてきて他作よりも間口が広い。かといってあの独特のパワーが無くなったわけでもなく、不謹慎さは全く減っていない。
カレー沢入門としてもよいのではないか・・・いや猫工船のほうがおキャット様の尊さが伝わるか。

2巻にいきなり「カレー沢総選挙」なるモノが挟まっています。
カレー沢クラスタであれば全て押さえた上で、ここはやはり原点のクレムリンか?いやいや国推薦のアンモラル・カスタマイズだと脳内議論するところだろうが、少し進めば結果も載っているので読み進めてください。作中にあるとおりわかんないひとはスルーで。
気になった方は、電書で揃うのでポチっと掲載作品を集めてみてはどうだろうか。